ホームページは、外部へ広く発信できる優れた手段です。商売上の営業ツールとしての使用はあるけれど、むしろそうでない方向で有効活用していきたい。ハンコを買わずとも、スタンプナメカワのホームページを見て「へえ、ハンコって大事なんだ」、「おもしろいジャンルなんだな」と伝わるものでなければ意味がないと考えます。逆に、そこがしっかりと押さえられたホームページであれば、直接的なビジネスに繋がらずとも高い価値がある。私がホームページを事業展開のツールとして利用する最大の目的は、まさにその点なんですね。
実店舗展開にしても同じことが言えます。たとえ商品を購入いただかなくても、来店したことでハンコを好きになったり、興味を持つきっかけになってくれたら、それは意味深いことだと思う。そう感じてもらえるため、何かしらの仕掛けをたくさんつくり、ハンコの大切さを知ってもらう役割を、積極的に自分が行ないたいという気持ちは強いです。
スタンプナメカワのこれまでの営業スタイルは、お客様が求めるものに対し、受け身の商売しかしてきませんでした。というのも、地域に根ざした大企業関連の仕事で商売が成り立っていて、関係性の維持に努めさえすれば良かった時代があるから。ところが今は、もう悠長に構えていられる場合じゃない。当たり前のこととはいえ、原点を見直し、より地元で受け入れられるための努力を重ねたいとは、改めて思っています。
かつての私は、早い段階で機械化を取り入れ「安く早く」のスタンスも経験しました。そのうえで手彫りという印章の原点に立ち返ってきたからこそ、見えるもの、感じることが多くあります。その一つが、今後の人材育成について。息子を跡取りに云々という話ではなく、ハンコが好きでスタンプナメカワで働く人を育てられる環境にしたいということ。遥か遠くのお客様でもネットを利用し「価値あるハンコを手に入れたい」と引き寄せる術がある以上、あながち夢物語ではないと感じています。
私がかつて修業した時とは違う形で展開できれば、若い人たちが手彫りの技術を覚える学び舎として成立する店づくりも可能な話だと思うんです。営業規模の話で言えば、事業を大きくするよりも、裾野を広げることが重要かな、と。画一的なオール機械化のハンコがはびこる状況だからこそ「本物の印章が欲しい」と求めてくれるお客様もまた多い。その受け皿となり得る技術を持った人材が育ち、やがて独立していく発信基地になるのが、スタンプナメカワの、そして私自身の理想です。